【海外ECで発生中】作品の無断販売とその対策
4/20の記事でも書いたとおり、
国外の正式な取引先がフォントの違法転売や個人情報の収集を行っておりました。
自分のフォントを含む多数のクリエイターの作品が作者の目の届きづらい形で無断で転売されており、
さらにネットで公開されている無関係の作品を無断で著作権登録されている可能性があることや、
虚偽の説明を受けたことで結果的に犯罪に巻き込まれる可能性のある状況に直面した、
という事実や懸念が判明しており、深刻な問題が潜在している可能性もあると感じました。
本記事は、問題のある業者と関わったことで見えた問題点についての情報共有を目的とし、
・日本人の目の届きにくいところで何が行われているのか
・無断での再販売や不正な著作権登録の何が問題なのか
・著作者はどんな対策をすればいいか
について、自分用のメモという目的も兼ねて書いています。
すべてのクリエイターさん、ユーザーの皆様の参考になりましたら幸いです。
はじめに
- この記事は、私(satsuyako)が体験した事例および収集した情報をもとに、
事実に基づいた公益目的での情報提供として作成しています。 - 今回の事例は日本国外の一企業によるものですが、特定の国への批判や、
特定の個人・企業についての誹謗中傷・名誉毀損を目的とするものではありません。 - また掲載している内容には、公開時点で確認可能であった情報を含みますが、
状況は今後変化する可能性があるため、常に最新の方法を保証するものではありません。
万一、本記事に関して誤りや掲載情報についてのご指摘がある場合は、作者までご連絡ください。
何が起きたか
中国のとある企業(以下、A社)とフォントの委託販売契約を締結したことにより、
裏で他者の作品の転売をしていたこと・違法な業者である可能性があることなどが判明しました。
- A社と繋がりのある店舗(以下、B店)で日本のフォントが大量に無断で販売されていた
- B店で売られている欧文フォントのひとつがA社名義で著作権登録されていることが判明
- B店では欧文フォントや、背景素材・イラストなども大量に販売されている(無断転売の可能性)
- A社からの虚偽の説明により、「刷单(スワダン)」という違法な行為に関与させられそうになった
- A社が法的根拠なく購入者の個人情報を収集していたことが判明
A社の問題点とB店との関連について(クリックで開閉します。)
A社の主な問題点
- A社は海外著作物を合法的に販売するための法的資格を所有していなかった
- 購入者から個人情報を聞き出していた
- A社から提示された契約書に不備があった
- 刷单(スワダン)という違法行為に関与させられそうになった
- SNSで私の個人情報入りの契約書が無断で公開された
- A社の公式サイトで日本のフリーフォントが大量に無断転載されていた
- 外国のとある欧文フォントがA社名義で中国で著作権登録されている
さらに詳細(クリックで展開)
- A社は「出版物経営許可証」や「文化製品輸入許可」を保持しておらず、
正規な許可無く海外作品の販売を行おうとしていました。
(おそらく他の無断転売業者もほぼこのパターンに当てはまると思われます。) - A社は無資格の違法販売にもかかわらず「ライセンス(授権書)」を発行するとして
購入者の個人情報(氏名・電話番号・身分証番号)を聞き出していました。
これらの情報は、適切な保護措置や目的の明示がないまま収集されていた可能性があり、
第三者への漏洩・悪用リスクも懸念されます。 - A社が提示してきた契約書には「中華人民共和国合同法」に基づく旨の記載がありました。
→2021年1月1日から「民法典」が施行され、「合同法」はすでに廃止されています。
古い契約書のテンプレートをそのまま使っただけで特に目的などなかったかもしれませんが、
新しい民法典では著作権・契約関係の保護が強化されているため、
あえて旧法を書くことで自分に都合よく解釈できる余地を残すなどの狙いがあったかもしれません。
或いはトラブルがあったときに契約内容そのものが無効にされる可能性のある
構成にしておくことで逃げ道を作っていたのかもしれません。 - 「中国ECでは販売数を増やすために自分の商品を購入するルールがある」などと
あたかも正式な慣習であるかのようにA社から説明されましたが、
自分で自分の商品を購入したり、複数店舗で連携したりして販売数の操作・水増しを行う行為は
「刷单(スワダン)」と呼ばれる違法行為です(かなり高額な罰金を科されるみたいです)
(私は自分の商品を購入していないし、この行為に一切関与しておりません) - ペンネームで活動している私の氏名・住所(市町村・番地レベル)入りの状態の契約書が
中国のSNS「RedNote」に第三者が閲覧可能な形で公開されていました。
意図的でなかったとしても、このような取り扱いが行われたことで、
万が一のトラブルに備えて警戒を強めています(該当投稿は現在は削除されています)。 - A社のものと思われるサイトは会員登録制のサブスクリプション形式で、
日本の各作家の個人サイトから持ってきたと思われる見覚えのあるフリーフォントや
SILライセンスフォントの画像・説明文(原文を中国語にしたと思われるもの)が転載されており、
その他欧文フォントや画像系のデザイン素材なども多数掲載されていました。
(私からの指摘後、すぐに削除されています。) - 外国のとある欧文フォントがA社名義で中国の国家版権局データベース上に
著作権登録されていることが判明しています。そのほか、匿名の方からの報告で
「A社名義で盗用によって多数の無料フォントの著作権登録をしている可能性がある」
との情報が寄せられました。
刷单(スワダン)とは
刷单とは、実際には商品を購入していない、
あるいは実際に取引の意思がないのに、購入やレビューを偽装する行為のことです。
日本語で言うと「偽装注文」「サクラ取引」「レビュー水増し詐欺」にあたります。
刷单は次のような手口で行われます。
- 実際に購入していないのに「高評価レビュー」を大量に投稿する
- ダミーアカウントで商品を購入→配送せずに取引完了→ランキングや実績だけ上げる
- SNSや掲示板で「注文ボタンを押すだけで○元」の報酬付きバイトを集めて偽装
- 上位表示・注目カテゴリ入りを狙って「売れたように見せる」大量注文を自作自演
- 偽物注文(架空の購入)を入れ、商品を実際に誰かに発送
・中身は空箱や安価なもの(クリップ、紙くずなど)
・宛先は無関係な第三者(ランダムな住所や過去の顧客など)
→配送完了として記録され、実績と高評価がつく
「刷单」は中国特有の言葉ですが、
行為自体は国際的にも深刻な問題として扱われています。
AmazonやGoogle Play・App Storeなどの「★5レビューをつけたらギフト」系もそうです。
もし、注文した覚えがない荷物が届いた場合は個人情報(名前・住所・電話番号など)が
過去の購入履歴や何らかの経路で第三者に漏洩・悪用されている可能性があります。
「送り付け詐欺」や「不正請求」の一環である場合もあるため注意が必要です。
関連店舗の存在
- 当初一切説明がなかったB店との協力関係が後になって判明
- B店では私の作品を含め、大量の日本語フリーフォントが無断販売されていた
- 第三者より、A社の店舗とB店の売上が連動している(売上偽装の疑い)との報告
- 他にも販売形態が酷似している店舗が見つかっており、
同一運営者または連携したグループによる別店舗の可能性が高いと見られる - 個人作家の作品の無断販売が行われているB店で、
日本の大手フォントベンダーの作品と思われるものが販売されており、著作権侵害が疑われる - B店で販売されている欧文フォントは数百件あり、
その多くが Creative Fabrica、Adobe Fonts、Fontspring、Befonts 等、
国際的に正規販売されているフォントを無断で収集・転売しているものであると思われる
関連店舗について(クリックで展開)
B店について、A社からは
「パートナーの1社であるB店にて貴方のフォントの無断販売があった指摘を第三者から受けた」
「店を含むタオバオ内の6店舗に契約書を見せ転売フォントの削除を命じた」
「B店から毎月報酬を受け取り、B店の顧客に対しA社サイトで教材を提供するなど協力関係があった」
「今回のことでB店との契約を解除し違約金300元を支払った」
などと説明がありました。
中国のECサイトでは、同一の運営者が複数の店舗を開設し、
商品やページデザインを共有することがあるそうです。
このような手法は、販売実績の水増しや検索結果での露出を増やす目的で行われることがあり、
同様のテンプレートを使って多数の店舗が開設されている可能性があります。
なお、B店では今でも販売フォントが少しずつ増え続けています。
大手ベンダーフォントの販売について(クリックで展開)
商品画像を見る限り、次のような販売形態です。
- 商品タイトルに「日文字体(日本語フォント)」とあり、
主に日本語フォントを集めた素材パックであることが示されている - ファイル形式はTTF/OTFなどと書かれており、複数のフォントがバンドルされて販売
(日本円で約400円ほどで合計300種類ほどのフォントがまとめ売りされている) - 日本の有名フォントブランドを誤認させるような画像・表現を使用
- 「Alibaba Group 版権声明」「店主声明」が掲載され、
著作権の正当性と著作権侵害の責任回避を意図した文言が記載 - 中国国家版権局の「著作権登録証」の画像を掲載し、正規品であるかのように装っている
中国国内の「著作権登録証(作品登记证书)」は自己申告制の登録であり、
誰でも登録可能なため他人の作品が無断で登録されてしまう可能性があります。
また、この登録証を用いて「版号(中国国家が発行する正式な出版許可番号)」を取得し、
「これは合法的に出版されたものだ」と主張するケースもあるそうです。
欧文フォントの販売について(クリックで展開)
例えばCreative Fabricaの利用規約、第12条の禁止事項には
You may never resell or redistribute the digital source files unless explicitly stated, you received written permission from Creative Fabrica, the designer or purchased a separate license allowing you to do so.
When deliberately breaching this clause, you agree that this will result in a $500 fine per breach, with a minimum fine of $10000.
日本語訳:
デジタルソースファイルを再販または再配布することは明示的に記載されている場合を除き、
Creative Fabrica、デザイナーから書面による許可を受けるか、
再販または再配布を許可する別のライセンスを購入しない限り、行ってはなりません。
この条項を故意に違反した場合、違反ごとに500ドルの罰金が科され、
最低罰金は10,000ドルとなることに同意します。
と書かれています。
A社名義で著作権登録されB店で販売中のとあるフォントはCreative Fabricaで正規販売されているもので、
作者さんに問い合わせたところ、B店やタオバオでの販売を一切許可していないとのことでした。
著作権登録に関する懸念
- B店で無断販売されているフォントがA社名義で著作権登録されていたことから、
B店で販売されている他の作品についても
同様に中国で著作権登録を無断で行っていた可能性が懸念されます。 - 現時点で正式な登録有無についての確認は困難な状況にあります。
特に気をつけてほしい方
- BOOTHでフリーフォントを公開したことのある方
- 個人サイトでフリーフォントを公開したことのある方
- 無料の素材配布サイトを運営されている方
- イラストレーターさん
私がこの問題に気づけたのは、中国の良識ある方が教えてくださったことがきっかけです。
その方は、外国人である私の代わりに法律相談所に何度も問い合わせてくださったり、
一日かけて企業の情報などを細かく調べてくださったりしました。
フォントだけでなくイラスト素材・デザインパーツなども複数の日本の素材サイトからの盗用が見られ、
転売業者から挑発・誹謗を受けながらも、繰り返し注意喚起を続けてこられたようです。
被害の構造を呼びかけてくださったことに、私自身も深く感謝しています。
また私自身も、アリエクスプレスの文房具ショップで日本のイラストレーターさんのグッズの
コピー品が売られているのを見たことがあります。
これまでにフリーフォントを公開したことのある方は高確率で作品を無断販売されていますので、
ご面倒でもタオバオにアカウントを作って確認することを強くおすすめします。
「日文字体」と検索するとこんな感じで日本語フォントがたくさん出てきます。
最近公開された比較的新しいフリーフォントも容赦なく転売されており、
転売業者たちはBOOTHや日本人の個人サイトをよく見ているのだと思われます。

何が問題なのか
作品の無断転売や不正販売を放置してしまうと、
作者本人や正規ユーザー、購入者すべてに深刻な悪影響が生じるおそれがあります。
クリエイター全体にかかわる問題
- 現在中国国内で私のフォントを含む、日本やその他の国のクリエイターの作品について
無断で虚偽の著作権登録がなされている可能性があり、
それが放置された場合、将来的に逆に権利侵害者として訴訟提起・ライセンス料請求・
販売差止請求等を受けるリスクが生じるおそれがあります。 - また、A社サイトやB店ではフォントだけでなく画像系の素材も多数販売されていました。
販売されている日本語フォントのほとんどが無断転売品であることから、
フォント以外の素材についても同じような問題がある可能性があります。 - 無断販売を放置していると「黙認されている」という認識が広がり、被害の拡大に繋がります。
→「他にも売ってるし大丈夫」と思われて、コピー・再販・他国展開が加速したり、
転売ページが上位表示され、正規品より先に目につくようになることもあります。
実際、私のフォントを転売していた店舗が現時点で6店舗見つかっています。 - 作品が改変された状態で配布・販売されると、作者の意図が歪められる可能性があります。
→ここのフォントの利用規約で「改変禁止」「譲渡禁止」にしているのは
改変されたデータによるトラブルを防ぐためでもあります。
今回のケースでも、一部のフォント作品について
原作者の許可なく中国国内で著作権登録が行われていることが確認されています。
ただ日本は1899年にベルヌ条約という、著作権の保護に関する国際的な条約に加盟しています。
日本が加盟する「ベルヌ条約」について
ベルヌ条約の主な関連規定は次の通りです。
- 内国民待遇の原則 (第 5 条)
締約国は自国民と同じように外国人の著作物を保護しなければならない。 - 無方式主義 (第 5 条)
著作物は、登録の有無にかかわらず自動的に保護される。 - 自動的保護 (第 5 条)
著作物が創作された時点で自動的に著作権が発生する。 - 本国法原則 (第 5 条)
各国は自国の法律に従って著作物を保護する。
(例:日本人の著作物が日本でどう保護されるかは、日本の著作権法に従う) - 保護の独立原則 (第 5 条)
同盟国における保護期間や保護内容は、著作物が利用される国の法律に従う。
(例:日本人の作品がフランスで使われた場合、フランス法に従って保護される)
中国もベルヌ条約加盟国である以上、ベルヌ条約の原則を守る必要があり、
たとえば日本で作られたものを、中国側で作者に無断で著作権登録した場合でも
中国での登録よりも「先に創作した著作権者」が原則保護されるようです。
つまり、中国で勝手に日本の作品の著作権が登録されていても、
ベルヌ条約の規定により、日本の作者は中国において自動的に著作権を持っていることになります。
中国では「著作権登録があれば有利に見られる」という裁判実務があるため
著作権登録制度があり、「先に登録した者」の方がプラットフォームでは優先されやすいようです。
しかし、それは本来の著作権者を否定できる根拠にはなりません。
ベルヌ条約があるから放置しても大丈夫?
ベルヌ条約は“自動的な著作権の発生”を保証するものですが、
“自動的なトラブル解決”を保証してくれるものではありません。
ベルヌ条約があっても、権利者本人が動かないと保護は実現されません。
たとえば長期間、侵害行為に対して何もしていないと、
相手が「黙認・承諾されていた」と主張してくるリスクがあります。
中国国内では「作品登記証書(作品登记证书)」が証拠として重視されるため、
悪意ある第三者が勝手に著作権登録し、「正規権利者」を偽装してくる事例もあるようです。
本来の作者・販売者であっても「あと出しで正当性を証明する」負担が大きく、
不利な状況に追い込まれる危険性もあります。
実務上、権利を守るには“行動していること”が重要視されます。
万が一、中国側が不当な削除や権利主張を行ってきた場合、
日本の作者は以下のような対応が可能です。
- 中国当局への異議申し立てや登録抹消の要求
- 中国での使用差止め請求や損害賠償の請求
- 日本国内での権利行使や侵害訴訟の提起
上記のような対応を検討する場合、文化庁の著作権侵害に関する相談窓口に相談するとよさそうです。
著作権侵害は、単に「面倒だから」「ダメージがないから」と済ませられる問題ではありません。
海賊版が出回ることより、作者自身の 信用・正規ユーザー・将来 にまで大きな影響を及ぼします。
「転売サイトと刷单」の組み合わせで無関係な第三者に被害が及ぶ可能性もあります。
転売フォントを購入した顧客にかかわる問題
- 違法に販売・再配布されているデータは、マルウェアやウィルスが混入しているリスクも伴います。
今回確認された不正販売事例においても、改変されたフォントファイルによる
ユーザー側のセキュリティ被害発生の危険性が存在します。(特に.exeや.zipで配布される場合) - 違法な転売屋はそれらしい理由をつけて購入者の個人情報を収集していることがあります。
収集された情報はダークウェブなどで売買され、
不正利用(刷单への加担や犯罪行為などに悪用)されるリスクも否定できません。 - 転売屋が正規ライセンスを持っていない場合、
購入者が「知らずに使っても」著作権侵害に該当する可能性があります。(特に商用利用の場合) - 転売フォントは出どころが不透明なため、
アップデートや不具合修正がなく、バグのあるまま使い続けることになります。
(転売屋は連絡先不明・販売元責任を負わないため、何かあったときに対応してもらえません) - 作家本人が不正販売に気づいた場合、
購入者が「故意に加担している」と誤解されるおそれがあります。 - コンペ・同人誌即売会・商業出版などで、
「正規ライセンス証明のないフォントは使用不可」とされるケースも増えています。 - 転売品が改変・偽装されていた場合、商用利用時に訴訟の対象になることもありえます。
転売業者の中には、作者の許可なくフォントを販売し、
しかも著作権登録までしてしまう悪質なケースが存在しています。
もしそのような販売元から購入してしまったとしても、必ずしも購入者の責任ではありません。
しかし、その事実を知った後も使い続けた場合、違法行為に加担してしまうことに繋がりかねません。
大切なのは、問題に気づいた後の行動です。
また、いわゆる転売屋の中には合法的に販売するための資格を所有していない、
納めるべき税金を納めていないなどの違法業者が存在します。
違法な業者に個人情報を渡してしまうと悪質な犯罪に悪用されるリスクもあり、非常に危険です。
これはフォントに限った話ではありません。
たとえ正規品より安くても転売屋は利用せず、正しいルートで購入してください。
A社と取引をしたことによる私の個人的な問題
- 私自身が中国に渡航した場合に、この取引先と契約したこと自体が犯罪の幇助や共犯として扱われたり、
不当な言いがかりを受けるリスクが現実的に懸念されるようです。
(中国の法制度上、外国人が意図せず拘束・事情聴取・出国制限等の措置を受ける事例が存在しています…) - 忘れた頃にA社に渡したフォントデータが無断で販売されるのでないかと警戒しており、
いつでも作者である証拠を出せるように準備を進めています。

私のフォントの正規販売サイトは
各フォントの説明ページにすべてリンクで掲載しています。
このサイトに掲載がない海外業者によるフォントの販売を発見した方は
匿名でも構いませんのでご一報いただけますと幸いです。
ここのフォントの著作権について
現在、中国で私のフォントが第三者によって無断で販売・著作権登録されている可能性があります。
正規に私から購入されたフォントに関しては、日本法・国際著作権条約に基づいて完全に合法なものです。
私のフォントは、2025年4月10日付で中国側とのすべての契約を正式に解除済みです。
万が一、中国側から「このフォントは自分たちのものだ」と権利を主張してきた場合でも、
それは無効な著作権登録や虚偽の法的根拠に基づいたものであり、通用しません。
正規ライセンスでご使用中の皆さまが法的に責任を問われることはありません。
万が一何か不当な通報等が発生した場合は、私の方で対応・サポートさせていただきます。
どんな対策ができるか
著作者であることの証明を整えておく
プラットフォームに著作権侵害商品を通報・削除要請する際や、中国側が権利を主張してきた場合に
「制作記録」や「原作者である証拠」「先に公開していたという証拠」が何よりも大事です。
- 作成日、公開日時、制作中のデータ(制作画面スクショ・ラフスケッチ等)を保管
- 作品の元データ(ソースファイル)は必ず保存しておく
- 作品のメイキングやタイムラプスを作ってみる
(悪用されないよう、公開する場合は非公開の情報を残しておくなど十分対策をする)
無断販売(転売)対策
- 転売・無断転載のあった海外ECサイトやアプリを定期調査
なお、今回は中国の「タオバオ」や「RedNote」での出来事です。
「字体」「设计素材」「可商用素材」などのワードで検索するとたくさん出てきます。
フォントの他にもVtuber向けの素材や日本の画像系素材屋さんの素材が多数転売されています。
日本人に向けての注意喚起だけで済ませず、適切な対処を行うことを強くおすすめします。 - 転売発覚時は毅然と対応し、記録を残す
(転売発覚時に必ず証拠スクショを確保し、販売ページごとに日付付きで保存・通報) - また転売行為が発覚した場合は、自分の正規サイト上での明確な権利表示と注意喚起を行う
違法な転売行為は、単なる「迷惑行為」ではなく作者の人生・文化の未来に関わる重大な著作権侵害です。
早期の発見・記録・通報・啓発発信をしていくことで、リスクの拡大を防げます。
文化庁に相談
文化庁(著作権課など)に相談すべきか迷う場面は多いですが、
以下のようなケースに該当する方は、相談する意義や効果が十分にあります。
- 著作権の正当な権利者(作者・著作権者)であり、明確な被害を受けている人
・自分のフォント・イラスト・音楽・文章などが無断で販売・転載・改変されている
・特に無許可で海外に登録(中国での著作権登録など)されている可能性がある
・著作物を誰かに渡した結果、無断で転売・偽装された - 著作権問題が個人では解決しづらく、行政や法的支援を必要としている人
・海外プラットフォーム(タオバオ、海外SNSなど)での著作権侵害に悩まされている
・弁護士や司法手続きの前に、アドバイスや対応方針の助言を得たい
・司法書士・法律相談などに行ったが、著作権分野に精通していなかった - 今後の被害防止や、他の被害者保護のために制度的な改善を訴えたい人
・「著作権登録制度」や「国際的な著作権保護のあり方」について制度改善の必要性を伝えたい
・実名でなくても、被害実態を情報提供したい
・著作権教育やEC規制の甘さについて、行政レベルに働きかけたい - 「これは著作権侵害なのかどうか」が判断つかない人(自己判断が難しい)
・二次創作/トレース/AI画像/翻訳作品など、グレーゾーンに不安がある
・「契約書に書かれた文言が意味不明だが、これって著作権譲渡されている?」など法的不安がある
逆に、第三者同士の個人的トラブルや商標権・特許・肖像権など著作権以外の問題、
海外プラットフォーム商品ページの削除を代行してもらうことなどは難しいようです。
(ただ、相談するとひとつの事例として情報提供になるのと、助言をもらえる可能性があります)
私自身も、海外ECサイトでの無断販売・著作権登録の可能性について
Dropboxに契約書などたくさんの資料をまとめて文化庁に提出&相談したところ、
複雑な内容にもかかわらず対応の方向性について丁寧で的確な助言をいただきました。
アリババIPPプラットフォームへの通報
タオバオ、Tmall、アリエクスプレスなど、アリババ系ECに自分の作品が無断で販売された場合は、
IPP(Intellectual Property Protection)プラットフォームにアカウントを作って通報する必要があります。
Taobao and Tmall IPPプラットフォーム:https://ipp.taobao.com
ばーちぃさんのnoteで通報のやり方を詳しく書いてくださっていますので、ぜひ参考にしてください。
私もこの記事を参考に自分の転売商品の通報を行い、無事に削除することができました。
ばーちぃさんの記事でとても詳しく説明してくださっているので詳細は省きますが、
自分の作品であると証明するために↓のような資料を作品ごとに作って提出しました。
私の場合転売フォントが4点あって、一気に4つ提出したら(おそらくAIに)速攻で弾かれてしまい、
削除まで2週間以上かかりました(更に1か月前からメールでも通報していたのでなんとかなった模様)。
アリババの知財保護チームへメールを送る場合も、著作者本人であるという証明が必要です。
この店舗(画像の赤背景の部分)は最初は私のフォント画像をそのまま使って転売していたのですが、
一度削除してから↓のように画像を差し替えてタイトルもわかりにくくして再販をしていました。
でも、多少加工をくわえていても作者は自分のフォントはすぐわかると思うので大丈夫です(?)。
大きな画像なので、PCの方はクリックするより別窓で開いたほうがよく見えます。
(実物はこの2倍ほどのサイズなのでどうしてもぼやけてしまう…)


今回の証明資料に含めたのは次のような要素です。
これらを1つの画像にわかりやすくまとめるといいみたいです。
- フォントの全文字サンプル
- フォントで文章を打ったサンプル
- 利用規約(全文)
- メタデータ(MacであればFinderのスクショなど、ファイルの作成日がわかるもの)
- 正規配布サイトのスクショ・URL
- フォント編集画面のスクショ(書き出しファイルとソースファイルの違いがわかると尚良し)
- 転売屋のスクショ(比較してすぐわかるように)
- 自分の作品が無断販売されていることを書いた文章
- 公開日と本名、自分のオリジナル作品であることを書いた文章
その他できること(フォントの場合)
- メタ情報に制作者情報・URL・免責文を書く
例として、私は最近制作した「STYK_まめもじ」フォントのメタ情報に次のように書いています。
よかったら参考にしてください(使用許可の範囲など、内容が合えばこのまま真似してもOKです)。
・Copyright(著作権)
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・Lisence(ライセンス)
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or uploading to third-party platforms is prohibited.
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or “Font Registration Number” purposes in China or elsewhere, is strictly prohibited.
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・Descriptions(書体ファミリーの説明)
This font is free for personal and commercial use, but redistribution, resale,
or unauthorized registration (including “banhao” registration in China) is strictly forbidden.
Official sources: https://satsuyako.com/mamemoji/
License: https://satsuyako.com/license-agreement/ - PUAなどにウォーターマーク的なグリフ(作者情報を書いたもの)を作る
(通常表示されない文字としてクレジットを埋め込んでおく)
→無断転売の被害に遭った際、自分の作品であることを証明する際に役立つ
→MacのFont Bookやグリフビューワ系のソフトでは確認できるので、
無断転売されたものを購入した人に気づかせるメッセージになることがある
(他人の無料作品を低価格で無断・違法販売する人物は高額な専門ツールや
フォントの編集技術を持っていない可能性があると考えられ、
データをそのまま転売しそうなので、現時点では一定の効果がありそうだと思いました) - できれば可視グリフ(「@」や「©」など何でも)にもクレジット表記を入れる
- その他、隠しグリフや「このグリフを見つけたら私のフォントです」と言えるようなものを作る
- Readmeや利用規約で「転売・再配布禁止」「代理販売には別契約が必要」と明記
- 正規販売先一覧を配布サイトなどに明示する(ユーザーが「どこで買うべきか」を判断できる)
- 海外企業と委託契約で契約書を交わす際、
・相手国の法制度が現行かどうかを確認する
・署名の形式が有効なものであるかを確認する
・不安な用語・文言はひとつひとつすべて調べる
・「著作権を譲渡する」か「使用を許可する」かを明確にする
・「著作権譲渡の範囲(利用目的・何を許諾するのか・期間・地域・禁止事項)」を明確にする
・「契約解除条件」を明記
・不安な場合、専門家に相談する(日本側主導で契約書を作成するのが理想)
その他できること(イラスト・画像の場合)
- 画像に著作権表示(©、作者名、年)を記載
- 公開サイトに明確な利用規約(商用可否・再配布禁止)を掲載
- 有料素材やSNSに投稿する場合は、サンプル画像にウォーターマーク(透かしロゴ)
- 正規販売先URLを明記したページを作る(作者HP)
- 画像にXMPメタデータ(著作者情報など)を埋め込む
例:PhotoshopやIllustratorの場合、
[ ファイル ] → [ ファイル情報 ] を選択すると、作者情報などを入力できます。
「Web用に保存」をする際、メタデータを保持する設定にすると埋め込まれるようです(詳しくはググってね)
他に思いついた方や、補足情報があれば教えてくださると嬉しいです。
中国での著作権登録の調べ方
中国での著作権登録の検索には「登録番号」などの情報が必要な上、
海外ユーザーはデータベース自体にアクセスできない場合が多いです。
そのため著作権登録の登録の有無について日本から調べることは難しいのですが、
調査方法として下記の方法があるようです。
- 中国国家版権局(http://www.ccopyright.com.cn/)の公式データベースから探す
- 知識産権総合ポータル「天眼查」「企查查」で会社名などの企業情報から探す
・天眼查(Tianyancha):https://www.tianyancha.com/
・企查查(Qichacha):https://www.qcc.com/ - 中国内の信頼できる専門会社に調査依頼する
また、タオバオなどの一部店舗で「著作権登録済」などと記載している商品に
登録証の画像を掲載していることがあり、そこに
「作品名称」「登记号」「作者名」「著作权人名」などが書かれている場合があります。
それを手がかりに、①の中国国家版権局で探すという方法もあるようです。
私自身が実際にまだ調べられていないので、
1度VPNを契約して中国経由でのアクセスを試してみようと思っています。
(ただ中国はVPNアクセスをブロックすることがあるそうで、成功するかはわからないです…)
もしも追加情報があれば追記します。
最後に
本件のような著作権侵害や契約上のトラブルについて公表することは、
時に中国側の関係者や企業からの削除要請や通報、
さらにはSNSやメールを通じた圧力が発生する場合もあります。
実際に、類似の事案において「事実を共有しただけ」で投稿を削除されたり、
海外から不当な通報を受けた例もあるそうです。
こうしたリスクを承知の上で、
「公正な記録と再発防止のために事実を公開する」という判断に至りました。
本当は誰の権利も侵害されないことが理想です。
しかし、デザイン・素材系サイトは日本国外の人からも想像以上に閲覧されていることがあり、
その中には残念ながら人の善意や知識不足につけ込んで都合の良いように利用する人が存在します。
こういう被害は「やられる可能性が高い」と割り切っておいた方が気がラクな面もあります。
今の段階でできる備えはしっかりしておきましょう。
とても長い記事を読んでくださり、ありがとうございました!